苦労があれば想い出も多くなる・・・。とはよく言うが、旅も半ばを過ぎた頃、私の脳裏にはゴールの感動のシーンが居座っていた。みんなで抱き合って感動を分かち合うシーンだ。考えただけで涙腺が緩んできた。しかしそんな我々の事情にはお構いなしに、最後も自然の猛威は手荒い歓迎をしてくれた。
ゴールに選んだサンクトペテルブルグのTV局の前にもうすぐ到着という所でひどい雷雨に見舞われてしまったのだ。ワイパーのないJonasunは先行車のテールランプを頼りになんとかたどり着いたものの、豪雨の為に私をコックピットの中に閉じ込めたままシートでカバーされてしまった。かくして我々の感動のゴールシーンは吹き飛んでしまったのだ・・・笑
今回の計画を実現する為に奔走した中で大きなポイントになったものがある。ひとつはJonasunがオーストラリアのレースに参加した実績があり、オーストラリア政府が発行した公道を走る為のナンバープレートと許可証があった事。これがあったお陰でロシア政府は何の問題もなく走行許可証を発行してくれたのだ。
もうひとつのポイントは前述の政府発行のお墨付きレターの取得である。これを貰う事が出来たのには私の本業でもあるヘアカットが少しだけ関わっている。モスクワの美容室でヘアカットのデモを行い、この時のニュース取材の中でユーラシア横断への協力を訴えたのが功を奏し、政府が全面的に協力を申し出てくれたという偶然が積み重なったものであった。本当に芸は身を助けるとは上手く言い当てている。
ソーラーカーが企業や大学あるいは専門家だけのものではなく、誰でも楽しめる世界であって欲しいと思うのは欲が深いだろうか?レースで記録に一喜一憂するも良し、マイペースで太陽を道標に知らない道を走るのもまた良し・・・。そんな楽しみ方を知ってもらう為にもRussian
Journeyはひとつのケーススタディとなりえるはずだ。
たった一晩のフライトが我々の体験した多くの苦難の道筋を何事もなかったように飛び越えてしまった。そして随分とスリムになったメンバー達はそれぞれの生活に戻っていった。
これからは収穫の季節で農作業に追われるであろう大潟村の3人は、「楽しかった・・・!叉行こうね!」・・と言って笑った。
今度は燃料電池車で世界記録を狙おうか(笑)
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